一目で分かるコンクリートフロア研磨作業の基礎 Vol.1

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準備段階

フロアの面積

最初に、作業するフロアの面積を確認して、正確な作業計画を立てる必要がある。

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作業計画で最も重要な部分は、作業面積に適切なフロア研磨機械とその運用計画を立てることである。
単純に、研磨幅が広い大型機械を使用すると、作業効率は上がるが、狭い通路が多く、多数の部屋がある場合や形が複雑な場合は、小型機械でその数を増やのが良い場合もある。

以下の表は、機械のサイズ別1時間当たりの作業量(研磨面積)をまとめたものである。

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壁際作業

見積りと準備段階では、壁際作業の作業量を正確に把握する必要がある。

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特に通路が多い現場は、壁際の作業量が多くなるので、注意しないといけない。
一般的に壁際作業は、手持ち式グラインダーや壁際専用の研磨機械を使用するので、作業効率が格段に落ちることが多く、メインフロアとの仕上げの差(むら)が出る可能性が高い。
こういった理由で、作業効率の部分と仕上げの差を考慮して、施工計画と費用を正確に算出する必要がある。
そして、何より重要なのは、事前にお客様に作業効率の部分と仕上げの差を充分に説明して、理解をもとめる必要がある。

作業において注意すべき部分は、メインフロアと同じ工程を踏むことであり、それによって、仕上げの差(むら)を最小限に抑えられる。


フロアの状態

事前にフロアの状態を確認して、作業計画と費用を正確に算出する必要がある。
コンクリートフロア研磨のメリットの一つは、打設直後のフロアだけではなく、既存のフロアにも施工ができることである。
但し、既存のフロアに研磨作業を行う場合は、既存のフロア材の撤去と、それにともなう傷やクラックなどの補修作業の範囲と費用を正確に算出する必要がある。


コンクリート表面強度の確認

作業前に、コンクリートフロアの表面強度を正確に確認する必要がある。

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作業に必要な時間と費用を正確な算出するためには、事前にコンクリートの表面強化を調べて、適切なダイヤモンド工具選ぶことで、作業時間と費用の節約につながる。

コンクリートの表面強化を調べる簡単な方法は、モース硬度キット(別名スクラッチテスト)を使うことである。
モース硬度キットの使用方法は、手持ち式グラインダーで、弱いコンクリートの表面を軽く除去して、モース硬度キットを使って、軽い感じでスクラッチを付くかを確認する。スクラッチが付く色と番号で硬さを確認することができる。

その時に注意すべ部分は、同じ現場であってもコンクリートの表面強度が異なる可能性があることである。最初にコンクリート表面の色を確認して、色が異なる場所は、必ず表面強度測定を行う必要がある。

そして、作業が開始後も、コンクリートが柔らかくて工具の消耗が早い、あるいは硬くて削れない可能性があるので、常に意識して最初のパス(研磨回数)か二回目のパスの時に再度確認する必要がある。
それによって、工具の無駄遣いと作業時間の短縮につなげられる。

 

研磨工程ごとの掃除の重要性

コンクリートフロア研磨作業において、研磨作業と同じように重要なポイントは、各研磨工程後に行う掃除作業である。

前の研磨工程から出た粉じんの中には、多量のダイヤモンド砥粒が残っている。
コンクリートフロア研磨の工程は、順番で細かいダイヤモンド砥粒の工具を使って、荒かったコンクリート表面をよりたいらで緻密に研磨していく作業である。
しかし、前工程の粉じんの中にあるダイヤモンド砥粒を除去しないと、次の研磨工程でフロアに傷を付ける可能性が高くなり、仕上げ品質の低下につながる。

コンクリートフロア研磨は、既存の下地処理とは大きく異なるのは、研磨面が仕上げ面になることである。その仕上げ面の品質を上げるためには、研磨工程ごとの掃除が何より重要である。
しかし、研磨工程ごとの掃除作業は、作業時間が長くなる問題(効率低下)を含んでいるので、効率的な掃除計画を事前に立てる必要がある。
掃除作業の効率化には、集じん機だけに依存するのではなく、自動床掃除機(オートスクラバー)の活用案を計画に入れると良い。


ダイヤモンド研磨工程 (Grinding → Honing → Polishing)


#14メタル研磨工程

コンクリート表面が非常に硬い、より骨材を露出させる、シーリング処理されている場合、コートのために荒い表面が必要な時に行う研磨工程である。

#14メタル研磨工程は、上記の環境では行う必要がある工程であるが、#14メタル工程後に残るスクラッチを消すには、比較的に長い時間を必要とする問題がある。
しかし、#14メタル工程の結果を#30メタル工程だけで求めるには、#14メタル工程のスクラッチを消す時間より、長い時間と努力が必要になるので、#14メタル工程を行うが良い。

特に、骨材の露出が必要な場合は、骨材の深さに応じて研磨作業の時間と作業量が増えるので、骨材が深い所にある場合は、研磨作業の時間と作業量を考慮して、深くまで削らないのが良い。

研磨工程が終わると、工具から出たダイヤモンド砥粒が含まれている粉じんを集じん機と自動床掃除機を使ってきれいに除去して作業は完了する。


#30メタル研磨工程

最も一般的な、標準研磨工程の最初の工程であり、仕上げ品質の8割が決まる最も重要な研磨工程である。

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重要度から、研磨作業の中で最も長い時間をかけて行う工程でもある。
頑丈で欠陥がない仕上げ、骨材を露出させた仕上げのためには、4パスの研磨作業を行う必要がある。
近年、時間短縮のために研磨スピードを上げて、残ったスクラッチをセラミック工具などで消す工法もあるが、その分フロアの仕上げ品質と強度が落ちことを理解する必要がある。

そして、傷やクラックなどの補修作業、目地部のJoint filler作業は#30メタル研磨工程の2パス後に行うのが、一般的である。
その理由は、#30メタル研磨工程は隠れていたフロアの問題が見える段階であり、軽い問題は、研磨工程で簡単に除去できるからである。
そして、#70メタル以上の研磨工程は、光沢仕上げの準備段階として、以前の研磨工程でできた軽いスクラッチを消す程度の研磨工程なので、研磨むらが出やすい補修作業は#70メタル研磨工程以前に行う必要がある。

#30メタル研磨工程が終わると、工具から出たダイヤモンド砥粒が含まれている粉じんを集じん機と自動床掃除機を使ってきれいに除去して作業は完了する。


#70メタル研磨工程

一般的には、まるいボタンタイプのメタル工具で作業を行う。その理由は、フロアの表面をより滑らかに繊細に研磨するためである。
しかし、仕上げ品質より作業効率を重視する場合は、研削能力が高い四角いセグメントタイプをつかっても良い。

この段階では、4パスまで行わず、2パスの研磨作業でも良いが、そのためには充分な研磨面が得られているか2パスの作業後に判断する必要がある。

作業から出た粉じんを集じん機と自動床掃除機を使ってきれいに除去して作業は完了する。


#120メタル研磨工程

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まるいボタンタイプのメタル工具で作業を行う。

前段階と同じように4パスを行わず、2パスの研磨作業でも良いが、4パスを行った時の仕上げ品質には勝らないことは、理解する必要がある。

作業から出た粉じんを集じん機と自動床掃除機を使ってきれいに除去して作業は完了する。


#50~#100レジン研磨工程へのトランジション

1パス~2パス作業を行う。
本格的な光沢仕上げの準備段階は、レジン研磨工程から始まる。

粗削り(Grinding)と磨き(Polishing)の間にあるホーニング(Honing)工程である。磨きの準備段階であると考えると理解しやすい。一般的には、#400までをホーニング(Honing)とみなす。
レジンボンド工具をレンジ専用ベルクロパットに付けて使用する。

作業から出た粉じんを集じん機と自動床掃除機を使ってきれいに除去して作業は完了する。


#200レジン研磨工程

1パス~2パス作業を行う。
求める仕上げレベルによっては、#200レジン工程で仕上げを完了する場合もある。

その時は、#100レジン工程後にケミカル製品による表面緻密化(強化)作業を行う。
フロアの表面は、ある程度スムーズな状態になるが、光沢は出ない状態である。

作業から出た粉じんを集じん機と自動床掃除機を使ってきれいに除去して作業は完了する。


表面緻密化(強化)工程

表面緻密化(強化)剤の前に必ず、自動床掃除機などで掃除を行う必要がある。

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自動床掃除機がない場合は、粉じんを集じん機を使って除去して、モップ拭きを行う必要がある。
掃除作業後、フロアが完全に乾燥するまで待ってから表面緻密化(強化)を行う。
水掃除したフロアは、その日の気温と現場環境によって異なるが1時間あれば充分に乾燥する。

簡単な施工性と高い作業効率を持つ、ケイ酸リチウム系表面緻密化(強化)剤を使用すると以下のように簡単に作業を完了することができる。
ケイ酸リチウム系表面緻密化(強化)剤をスプレーして、マイクロファイバーモップで伸ばして行って、乾燥を待つだけで作業は完了する。
既存のケイ酸ナトリウム、カリウム系の製品のように、染み込ませるためのスクラブ作業と残留物の水掃除の作業がいらないのが大きな違いである。

ケイ酸リチウム系表面緻密化(強化)剤の施工において注意すべき点は、厚塗りしないことである。
ケイ酸リチウム系表面緻密化(強化)剤は、浸透性が高いので少ない量での作業が可能であり、表面に隙間なく薄く伸ばして行く程度の塗布で良い。
コンクリートの表面の状態が良くない場合、薄く二回塗りするのも良い。

作業完了後には、フロアが乾燥するまで1時間程度待つ。


#400レジン研磨工程

1パス~2パス作業を行う。
ツヤ消し状態の薄い反射光が表れる。物流倉庫などの工業施設向けの仕上げに適している。
今までの工程に比べて、出る粉じんのかなり少なるが、必ず掃除を行う必要がある。


#800レジン研磨工程

1パス~2パス作業を行う。
明確な反射光が表れる。商業施設、住居施設などの仕上げとして一般的に使われる。
次の工程のために掃除を行う。


#1500以上のレジン研磨工程

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1パス~2パス作業を行う。
より高い光沢、反射光を必要とする仕上げには、#1500、#3500の工程を踏む必要がある。
機械的な仕上げ(Mechanical polishing)は、本工程で完了する。

必要に応じて、ケミカル仕上げ(Chemical polishing)であるシーリング処理と保護剤処理を選択することもできる。
しかし、施工後の定期的なメンテナンス計画があれば、ケミカル仕上げを選択する必要はない。


ケミカル仕上げ工程(シーリングと保護剤処理)

ケミカル仕上げの工程であるシーリングと保護剤の処理は、定期的なメンテナスが難しく、油、水、飲食物、歩行者による汚染など、様々な原因によるコンクリートフロアの損傷を保護する選択肢の一つである。

ケミカル仕上げの工程は、機械的な仕上げの工程が完了した後の最終工程として選択される。
作業の際に注意すべき点は、塗り残しによるむらと厚塗りによるストライプ模様にならないように薄く分けて塗ることである。
そのためには、塗りはじめの前にマイクロファイバーモップを充分に濡らしてから、厚く一回で塗ることよりは、二回に分けて伸ばしながら塗るのが良い。

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最終的に保護剤を馴染めさせ、光沢を出すためには、バニシャー(2000 rpm)か高速回転する研磨機(最低1100rpm以上)にメインテナンスパットを使って仕上げる必要がある。
一部の製品はバニシャーによる最終仕上げが必要ではない場合もあるが、多くの製品は高速回転するバニシャーを使って充分な熱を加えて仕上げる必要がある。
なので、シーリングと保護剤の処理のためには、仕上げに必要な追加事項について充分に考慮する必要がある。


*次回では、コンクリートフロア研磨のテクニック、クラック補修、新しい湿式研磨の施工方法に紹介します。