吸入性結晶質シリカ粉塵の危険性

はじめまして、株式会社TOGUYAの鄭(チョン)と申します。

これからTOGUYAは定期的に、世界のコンクリート業界の情報と動向を、皆様に紹介していきたいと考えております。

そして、その情報と動向を国内現場の現状にリンクさせる為に、私たちの見解と皆様の声を集めて、一緒に考える場を作りたいと思っております。

それによって、コンクリートに対する理解を共に深め、現場環境の改善(現場作業員の健康及び安全)と、作業効率の向上につながることを目指します。 

最初のテーマは、既に昨年度からアメリカの建設業界で実施されている、吸入性結晶質シリカ(ケイ酸)へのばく露に対する規則についてです。

これから3回に分けて、①その規則内容、②現場との関連性、③現在の国内施工現場における危険性について、一緒に考えていきたいと思います。

 

連載の内容は以下の通りです。

第1回目 ・・・ 規則の内容について
第2回目 ・・・ コンクリートフロアの研磨作業において注意すべき点について
第3回目 ・・・ 国内コンクリート表面強化作業の危険性について

 

最初の第1回目「規制の内容について」では、昨年度よりアメリカで実施されている吸入性結晶質シリカ(ケイ酸)へのばく露に対する規則についてご紹介します。

①    吸入性結晶質シリカとは何か? 
②    結晶質シリカを吸入するとどうなるのか? 
③    OSHAの吸入性結晶質シリカへのばく露に対する規則とは? 


吸入性結晶質シリカとは何か?

 

最初にシリカは、英語では Silicaと表記する、二酸化ケイ素(SiO2)の総称です。

結晶質シリカ(Crystalline silica)とは、自然にある一般的な鉱物です。

砂、石、コンクリート、モルタルなどの材料には、結晶性シリカが含まれています。そして、ガラス、陶器、レンガ、人造石などの製品を作るためにも使われています。

吸入性結晶質シリカはとても小さい粒子で、大きいサイズのもであっても一般的な砂の1/100ほどです。

コンクリート、レンガ、モルタルなどの切断、研磨、穴あげ、ショットブラスト作業から発生する粉塵に多く含まれます。


OSHAウェブサイトのSafety and Health Topics のSilicaから引用


結晶質シリカを吸入するとどうなるのか?

 

結晶質シリカを粉塵などで吸入すると、肺がん・珪肺症・慢性肺疾患になる可能性が高くなります。

代表的な疾患の一つである珪肺症について簡単に説明すると、英語ではSilicosisと呼ばれる疾患で、日本では鉱山病の一つである「よろけ」とも呼ばれました。

珪肺症の症状は、呼吸困難、重度の咳、頻呼吸、胸痛、発熱、爪のひび割れなどがあり、完治のための治療法はなく、症状の緩和と合併症の予防しかできない疾患です。
そして、症状が悪化すると死亡にまで至る疾患の一つです。


より詳し情報はWikipediaの珪肺ページをご参照下さい。


OSHAの吸入性結晶質シリカへのばく露に対する規則とは?

What's Covered Under OSHA'S New Silica Dust Rules

*和訳字幕は更新予定です。しばらくお待ちください。

2017年9月23日からアメリカの労働安全衛生局(OSHA)が実施した、吸入性結晶質シリカへのばく露に対する規則は、結晶質シリカを粉塵などで吸入することを防ぐために新たに設けられた規則です。

前述した通り、結晶質シリカを粉塵などで吸入すると、肺がん・珪肺症・慢性肺疾患になる可能性が高くなり、アメリカでは今回の規則によって、毎年600人を超える命を救い、900人を超える新規の珪肺症患者を防げると予測しています。

その規則の内容のポイントは、8時間以上の勤務時間において、吸入性の結晶質シリカの許容ばく露限界値を、空気中で50μg/m3以下に保つことです。

「吸入性の結晶質二酸化ケイ素の許容ばく露限界値を、8時間より長い勤務時間で、空気中で50μg/m3訳者注:0.05㎎/m3に相当する。
なお、ACGIHの2015年版のTLVs and BEIsでは、結晶質のSilica(α型の結晶として)のTWAは、0.025㎎/m3であり、濃度100%の結晶性シリカについての日本の作業環境評価基準の評価値(管理濃度)は、0.025㎎/m3である。」 

*中央労働災害防止協会のウェブサイトより引用

 

規則の詳しい概要は、中央労働災害防止協会のウェブサイトの日本語仮訳をご参照下さい。

OSHA's Final Rule to Protect Workers from Exposure to Respirable Crystalline Silica

OSHAの詳しい情報は中央労働災害防止協会のウェブサイトでご参照下さい。

今回の規制の目的は、現場環境における、吸入性の結晶質シリカ(粉塵)の管理体制基準を明確にすることです。

管理体制基準は次の通りです。
 
①    集塵装置の仕様表示と使用を義務づける。(HEPAフィルター装着、集塵能力を明確にする)
②    文章として結晶質シリカへの露出制御計画を立てる。 
③    現場作業員の健康管理を徹底させる。(医療記録の管理、定期医療検査の基準を明確にする) 
④    結晶質シリカの危険性に対する教育などを雇用者側に義務付ける。

*HEPAフィルターとは、0.3μmの粉塵を99.97%以上を捕集するフィルターです。

*原文は下記のOSHAの建設業に対する規則の標準からご参照下さい。


OSHAの建設業に対する規則の標準

この様に、OSHAの規則は、結晶質シリカの粉塵を吸入する危険性を現場向けに再度認識させて、現場での吸入性の結晶質シリカの露出に対する管理体制の強化と、現場作業員に対する医療部分の強化を図る目的で実施されました。

次回では、コンクリートフロアの研磨作業の際に結晶質シリカの粉塵を吸入する危険性と作業において注意すべき点について考えていきたいと思います。

ご意見や問い合わせなどは、office@toguya.comまでお願いします。

 

Photo source: Walls & Ceilings, Farrell Equipment & Supply Co., Inc.