コンクリートフロアの研磨作業において注意すべき点

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前回、吸入性結晶質シリカ粉じん(以下からシリカ粉じんとする)の危険から、現場作業員を守るために改正された新たなOSHAの規則についてご紹介しました。

今回はOSHAの規則の中に明確に示してある、コンクリートフロアの研磨作業中に発生するシリカ粉じんから現場作業員を守るために注意すべき点についてご紹介したいと思います。

新たなOSHA規則では「コンクリートフロアの研磨作業」において注意すべき点を
Walk-Behind Milling Machines and Floor Grinders Fact Sheet (手押しタイプの研削機械と床研磨機械の概況)で明確に示しています。

手押しタイプの研削機械と床研磨機械の概況は、コンクリートフロアの研磨作業と下地処理作業中に発生するシリカ粉じんをどのように制御するかについてまとめたものです。

最初に、シリカ粉じんを吸入すると肺に損傷(正常な肺には戻らない)を与えると説明をして、上記の機械を使用する現場では、シリカ粉じんを制御して空気中のシリカ粉じんの量を減らさないといけないと説明しています。

そのために必要な制御方法として、①湿式作業方法と②集じん機を利用する集じんシステムの構築(機械的な制御方法)をあげています。

以下では、その内容をご紹介したいと思います。


湿式作業(Wet Methods)

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湿式作業方法は、最も効果的にシリカ粉じんの量を減らす方法として紹介されています。
その理由は、湿式作業は空気中のシリカ粉じんの発生を最初から制御できる作業方法であるからです。

湿式作業に使われる機械には、継続的に研削面と研磨面に水が供給される給水システムが必要になります。
給水システムとは、一般的な床研磨機械に装着されているウォータータンクを使う給水システムとのことです。

給水システムの管理規定項目としてあげられているのは、以下の項目です。

・    水が供給されるホースに損傷がないかを確認して点検する。
・    粉じんが出ないように、ノズルを調整して研削と研磨面に水が十分に供給されるようにする。

そして、給水システム以外に現場で発生した泥の管理項目として、泥が乾燥してシリカ粉じんになる前にシャベルかHEPAフィルターが装着された集じん機で掃除を行うように規定をしています。


集じん機を利用した集じんシステム(VDCS:Vacuum Dust Control System)

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次に、集じん機(システム)を利用してシリカ粉じんの量を減らす制御方法として、必ず以下の項目を満たす集じん機(システム)を使うように規定しています。

・    工具メーカーが推奨する、フードとカバーを使うこと。
・    工具メーカーが推奨する集じん機で、シリカ粉じんを制御するために十分な吸引力があること。
・    99パーセント以上の集じん効率を持つHEPAフィルターが装着されていること。
・    集じん機にフィルターの清掃機能(手動、自動)が装着されて、規則的に使うこと。
・    集じんホースの直径が1.5~2インチ(55mm)以上あるもの。
・    粉じん回収袋の取り替え作業中に粉じんに露出されない回収袋を使うこと。(LONGOPACタイプの回収袋を使用して、バケツでの回収は禁止)

*集じんシステムを工具メーカーが推奨するものにした理由は、メーカーが示した工具の研削と研磨能力に下回るものを使用するのを防ぐためであります。
なので、工具メーカーが推奨するものでなくても、工具の研削と研磨能力を上回るものであれば問題ないと考えられます。

そして、下記の集じん機(システム)管理項目を確認する必要があると示しています。

・    ホースをきれいに管理して、詰まり、ねじれ、タイトにならないように注意する
・    自動フィルター掃除機能がない場合は、フィルターに粉じんがたまるのを防ぐために定期的に電源を切って掃除を行う。
・    回収袋は十分な頻度で交換作業を行う。
・    回収袋やフィルター交換の時に発生する粉じんにさらされないように注意する。
・    定期的な集じん機(システム)のメンテナンス計画を立てて、実行する。


それに加えて、圧縮空気の使用については、粉じんが原因で生じるくもりの発生を防ぐ換気システムがない場合は、エアコンプレッサーなどを使用してはいけないと示しています。
その理由は、エアコンプレッサーなどを使うとシリカ粉じんを空気中に拡散されて、ばく露への危険性が高くなるからであります。

なので、エアコンプレッサーは使わないで、必ずHEPAフィルターが装着されている集じん機か水を使って掃除を行うべきであると示しています。


呼吸器の保護(マスクなど)

OSHAでは上記の湿式作業方法と集じん機を利用する集じんシステムが構築されている現場では、マスクをつける必要はないと示しています。
この項目から、規定内のシステムが構築されれば、マスクをつける必要はない環境としてみなしていることが分かります。


室内あるいは密閉された空間の場合

室内あるいは密閉された空間で、上記の機械とHEPAフィルター装着の集じん機を使用する場合は、すべての工程ごとに粉じんを除去する作業を行う必要がある。
そして、室内あるいは密閉された空間は、シリカ粉じんへのばく露を減らす方法が難しいので、次のような追加の換気設備が必要であると説明しています。

・排気トランク
・携帯用排気ファン
・エアダクト
・その他の機械式換気システム


以上が「コンクリートフロアの研磨作業」のOSHAの規定であり、まとめると以下のようになります。

第一、    湿式作業を行うと最も安全である。
第二、    規定を満たした機能を持つ、集じん機(システム)を構築するべきである。
第三、    湿式作業か集じん機(システム)が構築されてある現場では、マスクを使う必要はない。
第四、    密閉された空間では、換気システムを構築する必要がある。


乾式作業が一般化されている国内の現場では、今回の規定で何より参考すべき部分は集じん機の仕様を限定していることであると考えられます。
アメリカでは、集じん機の仕様(規定に満たした機能)を限定することで、シリカ粉じんの制御する現場環境を維持、管理するようにしています。

その仕様のポイントは、①研磨能力に対する十分な吸引力があるか、②HEPAフィルターは装着されているか、③フィルターの清掃機能(手動、自動)は機能しているか、④回収袋(LONGOPACタイプ)を使用して、回収の際に粉じんにさらされないようにしているのか、の4点です。

この仕様のポイントを、現在使われている集じん機と比較してみれば、シリカ粉じんから安全な現場環境を守れているかを確認する一つの目印になると思います。

そして、最初からシリカ粉じんの発生を制御できる湿式作業への検討もする必要があるのではないかと考えられます。
近年、海外では新たな湿式作業の工法が次々と開発されているのが現状です。その新しい湿式工法は、水の発生を最低限に抑え、残りの泥の処分をしやすくする方法です。
近いうちに、その新たな湿式工法についてご紹介したいと思います。

では、最終回である次回では、国内コンクリート表面強化作業に発生するシリカ粉じんの残留物の危険性と、その処理方法の問題点について、ご紹介したいと思います。